改正電子帳簿保存法ですぐに困ること(「2年猶予」について追記 2021/12/20)

改正電子帳簿保存法について、令和4年度与党税制改正大綱で「2年猶予」が盛り込まれました。
下記で述べた「電子取引」に関する「規程の作成」や「ファイリング・索引簿作成」の部分について、対応が間に合わない事業者に配慮し、2年間の猶予が設けられました(2023(令和5)年12月31日まで)。

この件については、
1) あくまで今回の措置は「猶予」なので、下記で説明した方法によって2022/1/1より予定通り実施する
2) 2023/12/31までの猶予の期間のうちに準備を進め、可能となった段階から実施する
のいずれでも問題ありません。
しかし、「猶予」が設けられたものの、本措置を適用することでのメリットもあるので、わたしとしては1)の早期適用を推奨します。メリットとは、たとえばアマゾンなどで購入した物品の領収書(=電子取引)を、従来であれば紙で印刷して保管しておかなければ法令違反となりますが、下記の通り規程の作成や適切なファイリングを行うことで義務を免れることができるということがその理由です。

また別件ですが、下記の通り、「電子帳簿等保存」は任意ではありますが、こちらも早期に適用することでのメリットがあります。現在、電子帳簿等保存の届出をしていないにもかかわらず、仕訳帳や総勘定元帳等を印刷保存していないケースが散見されますが、今回の改正でこういった状況を救済する措置が講じられています。
国税庁によれば、一般的な会計ソフトを利用している事業者であれば、「優良以外の電子帳簿等保存」は問題なく適用できるとのことです。
ご興味ある方はぜひ国税庁サイトなどをご覧のうえ、前向きにご検討いただければと思います。

以下、前回の投稿です。
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2022(令和4)年1月1日、改正電子帳簿保存法が施行されます。
本日ここでは、制度の詳細というよりは、これまで税務署長の承認も取っておらず、なんとなくペーパーレスでやってきた方々が、最低限「いますぐ何をやらなあかんか」「何が困るのか」にフォーカスしてお話します。

まず、知っておいていただきたいのは、電子帳簿保存法でカバーされるものには、次の3つの区分があるということです。
1) 電子帳簿等保存
2) スキャナ保存
3) 電子取引
かなり複雑ですので、今後いろいろと調べていかれたりする中で、「これはどのことについての説明か」ということを理解しておかないと混乱することになるでしょう。

電子帳簿等保存スキャナ保存への対応>
これらについては「やりたい人だけやる」ものなので、法令に従った対応をしていればこれまで通りのままで問題ありません。
電子帳簿等とはいわゆる会計帳簿や決算書類のこと、スキャナ保存(書類)とは従業員からの経費精算の領収書など紙で受け取った書類のことですが、これらすべて(原本)を、これまで通り紙で保存しているということであれば問題ありません。

電子取引への対応>
そして問題なのは「電子取引」です。昨年の新型コロナ感染症の発生以来、各社でテレワークが進み、おそらく外部からの請求書や領収書をペーパーレスでやりとりすることが多くなったかと思います。
改正ルールでは、とりあえず「紙で印刷しておけばOK」という対応が可能でしたが、改正後はそうではありません。
「いや、うちは全部紙やからだいじょうぶ!」と思っている方も多いかもしれませんが、たとえばアマゾンで文具や書籍を買ったとき、領収書はほとんど紙で送ってこないですよね。領収書や請求書を「クラウドからダウンロードして印刷して保管」のこの形態は、まさに電子取引に該当します。メール添付のPDFもそうです。電子取引を全く行わずにビジネスを運営できている事業者は、少なくともわたしのクライアントではいまひとつもありません。
こちらは「やりたい人だけ」ではなく、電子取引をしている人、つまり全員が対象となります。
訂正削除不能のドライブシステムの利用や、「タイムスタンプ」対応ができれば問題ありません。しかし、これらはコストの問題もあってまだまだ普及しておらず、これがむずかしいという前提の現状では、①社内規程を作成することで対応が可能となります。「訂正・削除の防止に関する事務処理規程」を定め、その規程に沿った運用を行うことで要件を満たすことができます。法人・個人事業者とも、規程のひな型(Word文書)が国税庁サイトにありますので参考にしてください。
繰り返しになりますが、この「電子取引保存」で注意すべき点は、改正前とは異なり「電子でもらったものをあとでこちらで印刷」が通用しないところです。改正後は、電子データで受け取った書類はデータのままでの保存が原則となるため、もしタイムスタンプも前記の社内規程策定も難しく、あくまで紙で、という場合は、相手方から領収書の原本を郵送などしてもらい、それを保存する必要があるということになります。
そしてもう一つのやっかいな点は、基準期間の売上高が1千万円超の事業者に求められる、②検索要件の充足です。こちらもコストをかけたシステム導入が難しい場合には、(a)規則的なファイル名を付したデータの保存や、(b)エクセル等での索引簿の作成が求められています。国税庁のエクセル索引簿のサンプルがこちらにありますので参考にしてください。

☆☆要件を満たさず、最悪の場合には青色申告承認の取消しの事態になる可能性もありますので、くれぐれもご注意を!☆☆

以上です。ペーパーレスに前向きに取り組みたい、電子で業務改善したい、もっと便利にしたい、という方へのコラムは追って執筆するつもりですが、本日は2022/1/1に向けての緊急対応についてでした。

<参考>
国税庁ウェブサイト「電子帳簿保存法関係
国税庁動画チャンネル「教えて!!令和3年度改正 電子帳簿保存法