「記名」と「署名」、「捺印」と「押印」
「電子帳簿保存法」の改正がありましたね*。
話題のテレワーク、文書のクラウド保存などにも関連して、わたしもいま勉強中です。またいろいろ学んだらこちらのコラムで紹介したいと思っていますが、今日はその前提にもなるもっともっとベーシックな内容です。
役所に出す書類などでは、「記名押印」とあったり「署名押印」、「自署」、「捺印箇所」などさまざまな表記があります。それぞれの意味をまとめておきますね。
まず「記名」は、ネットで辞書検索すると「名前を書くこと」とシンプルに出てきました。
対して「署名」は、「本人であることや責任を明らかにするために(書類・書簡などに)自分が氏名を記すこと。そのようにして書かれた氏名。自署。」だそうです。「署名」=「自署」ということですね。
実務上は、これを解釈して、「記名」とあればタイプやパソコンでのプリント、ゴム印などでもOKとしています。しかし「署名」の場合は、本人の手書きである必要があります。
たとえば法人税の確定申告書では、表紙になる別表一に法人情報等を記載するのですが、そこには「代表者記名押印」とあります**。これはつまり、ソフトウェアなどを使って申告書を作成した場合、社長さんの名前は手書きではなくシステムで入力してしまってOKということです。ちなみに平成29年までこの欄は「代表者自署押印」となっていましたので、たとえソフトを利用して申告書を作成しても、この部分だけはブランクでプリントして、社長さんが手書きしないといけなかったということでした。
次に「捺印」と「押印」です。
辞書では、「捺印」は「印を押すこと」、「押印」は「印判を押すこと。捺印」と出てきましたのでほぼ同じ意味ですね。一般的には、印鑑登録をした印鑑(実印)を押すことになりますが、会社によっては実印の他に「契約印」や「銀行印」「角印」などで運用していることも多くあります。
しかしわたしも正直知らなかったのですが、ビジネス上は、「捺印は署名捺印の略」、「押印は記名押印の略」という解釈をすることもあるようです。つまり「捺印」とあれば手書きの署名が必要で、「押印」であればタイプでOKということでしょうか。
個人的には、「署名押印」にも違和感はありませんし、「代表者氏名捺印」とだけあれば、署名ではなく社長の名前はゴム印やタイプで済ませてしまうと思います。この根拠となる法令等を見つけたらまた紹介するようにしますね。現在は、国税庁も電子申告を推奨しており、これら「署名」や「押印」というのもこれからは時代遅れということになって行くのだと思いますが。
ちなみに、代表者の署名は実印と同じ効力があると解釈されています。たとえば契約書に、社長の署名はあるが会社の実印が抜けていた場合でも、その契約を無効とすることはできないでしょう。
そして印鑑自体の種類、「実印」「契約印」「銀行印」「角印」ですが、ぶっちゃけ「印鑑証明を添付した実印」以外はその効力にはあまり変わりはないといえるでしょう。実印というのは、個人でもそうですが、「印鑑登録」をした公的な効力をもつものですが、それ以外は法人が勝手に作成できるものなのです。
「実印」が大切なものであるがゆえに、契約や銀行取引などの際に持ち出してちょこちょこ使うのはリスクを伴う、ということで「契約印」や「銀行印」といったものが実務的には利用されています。特に角印は、請求書等に押すものですが、個人で言うと100円ショップで買える「認め印」くらいの意味しかありません。
* 2020/10/1改正
** 2021年4月から税務署提出の各種書類については押印が不要となっています。
<参考>コラム「印レス!ハンコレス!」