インボイス制度 -1万円未満の請求書は不要?
いよいよあと3ヶ月に迫った「インボイス制度」、今日も重要な経過措置についてお伝えしていきます。
少額特例(一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置の概要)というルールができました。
1万円未満の課税仕入れについては、インボイスの保存がなくとも仕入税額控除ができる、というルールです。ポイントは、
1) 税込1万円未満
2) 課税売上高が1億円以下の事業者
3) 期間は6年間
です。
ここでポイントとなるのは、あくまで「インボイスの保存がなくとも」ということで、インボイス発行事業者の交付義務を免除するものではないということです。なので、インボイス発行事業者は、課税事業者から発行を求められたときは交付する必要があります。逆にいうと、みなさんの会社が小規模事業者でも、課税事業者であれば、きちんと管理するために1万円未満の適格請求書の発行を依頼するのはOKということになります。取引先に発行依頼したときにもし「えー、お宅小さい会社やし、1万円未満やし要らんのとちゃうのー?」とか言われてもひるまないように!
では、詳細の解説です。
1)税込1万円未満なので1万円は含みません。つまり税率10%で税抜9,090円、8%やと9,259円までとなります(いずれも切捨計算)。
そしてこれは「一回の取引の課税仕入れに係る金額」が判断基準です。
つまりたとえば、5千円の商品と7千円の商品を同時に購入した場合には合計1万円以上となるため「少額」ルールの適用はありません。逆に同じお買いものでも、5千円とは別の日に7千円を購入して、請求書/領収証が別になれば〇です。
2)小規模事業者の事務負担を軽減することが目的なので、いわゆる大企業は含みません。こちらは1億円以下なので1億円はギリギリセーフです。ちなみに対象となるのは「基準期間」の売上高なので、2期前のものになります。
3)の6年間は、令和5(2023)年10月1日~令和11(2029)年9月30日です。これは、前回のエントリーでもあった通り売上側の納品/計上日で判断します。「適格インボイスめんどいから9月に前払いしとくわ!」はNGです。
また、たとえば3月決算の会社であれば、終了時の2029/9/30は課税期間の途中になりますが、2029/10/1以後に行う課税仕入れについては対象とはならない(つまり適格インボイスが必要)ので注意が必要です。
それから帳簿の記載事項についてですが、他の経過措置では一定事項の記載を要件とするものがありますが、この措置については特例の適用がある旨を記載する必要はありません。
以上が解説ですが、個人的には、小規模事業者であってもできる限り早い段階で適格請求書の保存を行うことをお勧めします。
ルールがかなり複雑なので個々の社員さんへの説明も困難です。「あー、これは要るけどこっちは要らん!あ、〇〇までやけどな!」みたいなのを毎回説明するなんて気が遠くなる。
それに結局、法人税法上の損金算入のために証拠書類が必要となることには変わりないので、社内統制の観点からも、すべての取引について証拠書類(≒適格インボイス)の収集を行うことを強くお勧めします!
<参考>国税庁ウェブサイト「少額特例の概要」、「1万円未満の判定単位」