社員研修や旅行の費用計上
会社を作って人材採用をすると、リテンション(=維持・保持するための努力)が必要になってきます。与える担当業務自体の面白さもそうですが、教育や福利厚生も重要ですよね。
今回は、その中でも社員研修や社員旅行の費用についての税務上の取扱いについてです。
まず、「研修旅行」については、一般の経費と同様に、業務上必要であると認められる場合には、もちろん損金として計上可能です。そして従業員個人の所得になることもありません。
しかし、業務とは直接関係のない、いわゆる「社員旅行」について、国税庁ウェブサイトには次のようにあります。
「従業員レクリエーション旅行の場合は、その旅行によって従業員に供与する経済的利益の額が少額の現物給与は強いて課税しないという少額不追及の趣旨」つまり、原則は給与として課税すべきだけれど、例外を認めるよ、という構成になっています。
<参考>国税庁ウェブサイト
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2603.htm
上記サイトには、事例として「3泊4日15万円はOK」しかし「5泊6日はNG」などと細かい期間や金額まで例示されていますが、これは過去判例からの解釈によるもので、条文上定められているものではありません。したがって、税務調査が行われた際には、個別の内容をもとに判断されることになります。
旅行を実施する場合、気を付ける点のひとつとして、全従業員に参加資格があるかどうか、があげられます。全従業員とはいっても、大企業であれば部署単位全員、などでもかまいません。
一部の従業員だけを対象にした場合には、「褒賞」の意味合い、つまり「賞与」ではないかということで賞与(給与)課税の対象となる可能性があるからです。
あとは、社員旅行に家族を同伴させる、ということもあるでしょう。その場合には、家族のために会社が支出した金額は、当該従業員の所得となります。従業員にとっては、たとえば会社が家族のために10万円分の旅行代金を支払ってくれたとしても、その金額に相当する所得税は個人で負担することになります。ご存じの通り、所得税の税率は5~45%です。
その税額相当分をさらに会社が負担する(グロスアップする)ということも考えられなくはないですが、個人の所得税率は人によってさまざまなので、それを正確に計算するには年末調整を経なければならず、また、翌年の住民税も加味するとなればそれは現実的ではないでしょう。「税金分だけ自己負担して家族も連れて行ってもらうんだ」と、ここは従業員に割り切ってもらうのがよいのではないかと思います。
あと、別の注意点としては、その「給与課税相当額」が、社会保険の計算上「賞与」と認められた場合に、相応の社会保険料が発生してしまう可能性があることです。所得税は賞与分であっても、年末調整を経て最終的に精算されますが、社会保険料は「払いっぱなし」です。この点は、社会保険労務士さんの範疇になってきますので、個別に相談されることをお勧めします。
なお、ここでは従業員個人の「給与課税」について話しましたが、いずれの支出も会社の帳簿上は、経費として通常通り処理するということになります。科目についても、給与課税=給与勘定でなければならないということはなく、内部管理上「福利厚生費」としたければそうしてもかまいません。その金額を従業員個人の所得計算に含めてさえいれば、会計上の科目を問われることはありません。