源泉徴収義務について#3 「口述の報酬」などちょっとマニアな内容
以前のコラム(源泉徴収が必要な取引、支払報酬等に付随する実費に対する源泉徴収)でもご紹介した通り、個人の方への原稿料や講演料等の支払には源泉徴収義務がありますが、今日はさらにマニアな内容です。笑
まず、ご存じでしょうか?源泉徴収が必要な「原稿の報酬」には、「口述の報酬」というものも含まれています。作家さんでもゴーストライター的な問題がときどきありますが、手を動かして実際執筆していなくても、本人が書いたのと同じだという趣旨なのでしょう、口述でも「原稿の報酬」として源泉徴収義務があります。
これに準じて、たとえば会社のウェブサイトに掲載するための、個人のお客さまへのインタビュー記事なども、インタビュー=口述の報酬、ということで源泉徴収義務ありだと考えられます。
「写真の報酬」つまり、フォトグラファーさんへのお支払については、「雑誌、広告その他の印刷物に掲載するための写真の報酬・料金」とあります。これは「印刷物に掲載」なので、インターネット上のものについては、厳密には源泉徴収不要ということになります。
しかし、お仕事をお願いした際に、「いつもはこの方の写真、ネットだけだから不要だけど、今回は印刷物に使うものもあるので一部源泉しとこう」「じゃいくら?」みたいなのは実務上非常に煩雑なので、一般的にはフォトグラファーさん=源泉義務あり、とされているところが多いと思います。
これが写真ではなく「挿絵の報酬」となると、「書籍、新聞、雑誌等の挿絵の料金」とあります。通常の日本語で考えれば、出版される紙媒体に限定されているように思えますが、「等」とあるのでネットへの掲載や、出版とはいえないような社内文書なども含まれる可能性が否めません。
そして「レコード、テープ又はワイヤーの吹き込みの報酬」、その名称通りの内容プラス「映画フィルムのナレーションの吹き込み」も入るそうですが、じゃYoutubeはいらんの?と思いませんか。それについては「放送謝金」=ラジオ放送、テレビジョン放送等の謝金等、という項目があるので、この「等」によって含まれてくるのではないかと考えます。
以上は、非常に厳密に解釈した場合の話なので、いずれの場合も、あいまいなときはリスクを避けるために源泉徴収しておく、ということが無難でしょう。もちろんご本人への了承を得たうえでということが前提ですが、源泉徴収義務はあくまで会社(支払者)に課されるもので、また、指摘があったのち、あとから支払先(受給者・個人)に請求するのが難しいと思われるからです。
最後に金額についてですが、ネット上で、個人への一般的な支払について「5万円以下の支払であれば源泉徴収は不要」と書いてあるものを見かけたことがありますが、これは誤りです。たとえ100円であっても、源泉徴収・納付義務は発生します。
下記リンク先のタックスアンサー中ほどに「(3)懸賞応募作品などの・・・1回5万円以下であれば、源泉徴収をしなくてもよいことになっています」とありますが、これはあくまで懸賞応募作品等であることが前提ですので、これを拡大解釈してすべての賞金や謝礼金が5万円以下なら不要ということにはなりません。
No.2795 原稿料や講演料等を支払ったとき
ちなみに、源泉徴収もれに対するペナルティ「不納付加算税」は、5千円未満であれば課されないという規定があります。5万円弱の支払で源泉所得税等(10.21%)が5千円未満であれば、ペナルティが課されない、ということと上記の「懸賞応募・・・5万円以下」がミックスされて、5万円以下なら源泉徴収不要、という誤った解釈がされているのかもしれませんね。
源泉所得税は非常に細かい規定があり、解釈に悩むことも多くあるかと思います。
お困りの際は専門家へご相談くださいね。