給与天引き、預り金
従業員を雇ったら源泉徴収義務が生じることや、住民税の仕組みについて、以前のコラムでお話ししましたが、今日は、その具体的な仕訳処理などについてのガイダンスです。
例: 1/25に1月分の給与(総額100,000円、手取り196,000)を支払った(金額はあくまでダミーです)。
天引きしたもの・・・所得税(800)・健康保険料(1,000)・厚生年金保険料(1,200)・雇用保険料(400)・住民税(600)
仕訳は次の通りです。
(借方)給与 100,000
(貸方)普通預金 196,000
預り金(源泉所得税) 800
預り金(健康保険料) 1,000
預り金(厚年保険料) 1,200
法定福利費* 400
預り金(住民税) 600
* 雇用保険料は法定福利費ではなく預り金とすることもあります。
預り金が4種類出てきましたね。これらの内容はそれぞれ次の通りです。
1) 源泉所得税
その月の所得額によって、税額表で示された税額を天引きし、それを翌月10日までに税務署に納付します(上記例では1月支払分の給与に対する税額は2/10が期限となります)。「納期の特例承認」を受けている場合には、毎年1月と7月に半年分をまとめて納付することもできます。上記例であれば、1-6月分をまとめて7/10までに納付することになります。
2) 健康保険料・厚生年金保険料(=社会保険料、社保料)
社保料は、加入時に給与額をもとに「標準報酬月額」というものが決められ、それに基づいて会社が天引きをします。天引きした保険料は、同額の会社負担分+子ども・子育て拠出金とともに社保庁に納付することになります。上記の例であれば、1,000+1,200=2,200円が従業員負担分、会社は2,200円に子ども拠出金が加算された金額を負担することになります。もし上記例で、従業員がこの一人だけだったとしたら、毎月の納付額は、4,400+少額の子ども拠出金、となります(納付額は社会保険庁が計算して納付書を送ってくるため、こちらで計算する必要はありませんので、ご心配なく)。
その後は、毎年一度「定時決定」というのがあって、4-6月の3ヶ月分の給与額をもとに標準報酬月額が決められ、9月から新しい保険料額を天引きしていくことになります。
ここでひとつ注意が必要なのは、社会保険料の天引きのタイミングです。わたしが知っている大抵の会社では、加入月(入社月)には天引きをせず、翌月給与で前月分を控除、というパターンが多いです。たとえば、12/1入社の社員がいた場合に、12/25の給与では所得税と雇用保険の天引きだけを行い、翌月の1/25から所得税・雇用保険に加えて社会保険を控除する、といった具合です。社保庁からの納付書がひと月ずれて送られてくるので、このパターンであれば、毎月月末に社保料の預り金は残らないことになりますが、従業員の退職時に、2ヶ月分の保険料を天引きする必要がある場合があるので注意が必要です。それを避けるため、当月分を当月徴収、とすると、月末決算時に預り金残高が残ることになりますので、どちらがよいかは悩ましいところですね。
3) 住民税
住民税は、以前のコラムでお伝えした通り、「特別徴収」対象の従業員について、会社が納付することになります。当月分を翌月10日までに各市区町村に納付しますので、上記例であれば、1/25の給与で天引きした住民税は、2/10が納付期限です。納付先が各市区町村なので、従業員が住んでいる市区町村の数だけ支払先がある、ということになります。これは毎月かなりめんどうな作業ですので、webバンクなどで一括処理されることをお勧めします。あと、毎年1月末までに「給与支払報告書」というものも作成せねばならず、これも会社にとってはかなりの事務負担となります。
あと、今日は時間切れで説明できていませんが、「法定福利費」のマイナスとして処理する雇用保険料については、年一回の労働保険料の申告と関わってきます。
以上、預り金についてお話ししましたが。。。自分で読み返していてもかなり複雑で分かりづらいですね。すみません。
このように、会社の「徴収義務」は複雑かつ非常に手間のかかるものです。本来は従業員個々人の負担となるべき税や保険料ではありますが、しかしこれらを疎かにしていると、会社に対して罰則等が課されることがありますので、くれぐれも注意をお願いします。
この辺りは、たとえ雇用している従業員が一人だけだったとしても、社長さんが自力ですべて処理することはかなり難易度高いと思われますので、適宜社会保険労務士さんにご相談されることをお勧めします。
その他会計帳簿の仕訳等についてなど、何かご不明なことなどありましたらいつでもお知らせくださいね。